福山諸聖徒教会 教会だより 2018年1月号 |
司祭 マルコ 平野一郎
昔、ある山の頂上に、三本の木が立っていて、その三本の木には、それぞれ将来の大きな夢がありました。
一本の木は、世界一美しい宝石箱になることで、二本目は、世界一大きな船になることで、三本目の木は、人々がその木を見るとき、神様を思い出すような、そんな世界一背の高い木になることでした。
時は過ぎて、三本の木は大木になりました。
ある日、木こりが来て、「綺麗な木だ」と言って、一本の木を切り倒しました。その時、木は「宝石箱になるんだ」とつぶやきました。
次の木こりは「頑丈そうな木だ」と言って斧を振るい、木を切り倒しました。
その時、二本目の木は、「立派な大きな船になるぞ」と言いました。
次の木こりは、木を見ようともしません。
「どんな木でもいいんだ」とつぶやくやいなや、切り倒してしまいました。
さて、美しい宝石箱になることを願っていた木は、木工所に運ばれ、自分の願いとは違う、家畜のえさ箱になりました。
二番目の木は造船所に運ばれ、心はずませていましたが、段々削られ、叩かれ、大きな船ではなく、魚を獲る小舟になりました。大海原どころか、生臭い魚を運ぶ毎日でした。
三番目は製材所に運ばれ、太い角材にされたままで、「ただ、あの山に立って、神様を指していれば、満足だったのに」と独り言を言いました。
それから何年も月日が経ちました。もう自分たちの願いは、すっかり忘れていました。
そんなある夜、宝石箱を夢見たえさ箱に、一人の女性が生まれたばかりの幼子を寝かせました。一番目の木は自分が世界で一番素晴らしい宝物をお入れしたことに気づきました。
ある晩、二本目の木の小舟に、疲れた旅人たちが乗り込んで来ました。舟が陸から離れると、人々は眠り始めました。すると嵐になり、舟になった木は恐ろしくなり、壊れてしまうと思いました。
するとその中の一人が「静まれ」と言うと、嵐が静まりました。その時、自分は天と地を治める王をお乗せしているのを知りました。
また、ある日、長い間積み上げられていた、三番目の角材が引き出され、大勢の人々のあざけりの中を通っていきました。
そして、一人の男に釘が打ち込まれました。木は恐ろしさで震えました。それから三日目の朝、日が昇り、三番目の木の足元で、大地が喜びに満ち、神様の愛で全てが変えられたことを知りました。
神様のなさる、すばらしい業
この木の話は思い描いていた夢が全く違った形で叶ったという内容ですが、「求めたものは一つとして与えられなかったが、私の願いはすべて聞き届けられた」という『叶えられた祈り』の詩と重なり合うと言えるのではないでしょうか。
私達の夢や願望も、神様がすばらしい宝物の形に変えて下さることを覚えたいものです。